滋賀の旅・2日目の主戦場は能登川となる。
あまり馴染みのない地名かもしれない、かく言う私も今回初めて知った地名だ。
何か観光資源があるのか?
『多分ない!』
『失礼なことを言ってスイマセン。』
いや、あるだろう、伊庭の坂下し祭りだ。
伊庭の坂下し祭りとは・・・・。
繖峰三(さんぽうさん)神社、大濵神社、望湖神社の三社の春祭だ。
繖山(きぬがさやま)の山頂にある繖峰三(さんぽうさん)神社から麓の大鳥居まで、
断崖絶壁の崖を3基のみこしを引きずり下ろす神事である。
歴史は800年以上あるといわれている。
『何のためにのするのか?』
誰もが考えてしまう疑問だ。
だが、誰もその質問に答えられる人はいないだろう。
物事には必ず理由があるはず、だが何百年もの時を過ぎれば、いつかは忘れ、それは途
切れてしまう、しかしこの御輿を崖から下ろす行為は続いた。
なぜだろうと考えることは必要だが、答えが出ない時もある、
その時は『 謎 』というのが答えだろう。祭りの起源などはそんなものだ。
お祭りのスケジュールだが、
◇11時40分頃から
担ぎ手達が繖峰山神社本殿に参集。
餅のふるまい、お祓いなどが行われる。
◇12時00分頃
宮出し・本殿出立。
◇15時30分頃
麓に到着。
かなりの長丁場だ、そのため日頃からの鍛錬が必要となるのだ。
では実際に行ってみよう!
そこから徒歩20分、かなり良心的な距離だ。
本日も早起きをして、4時起床だ、しかしホテル出発は9時35分だ。
この無駄のような長い時間が良いのだ、今日いく場所を調べたりする、何があるのか?
掘り出しの場所がないのか? 産業や名産や人口など様々だ。
やはりその土地に行くには、それなりの知識が必要だ。
(なくても良いが、無いとあるのとでは気持ちが違うのだ。)
米原駅には9時35分に着いた、
駅にはかなりの人がいた、もう10時近くなのだから当たり前か・・。
9時50分発の姫路行きの新快速に乗車する、
『そうか姫路まで射程におさめているのか。』と改めて実感する。
でも姫路には2時間以上かかる、かなりの距離だ。
ホームに降りると、9時39分発の列車が停まっていた、
これに乗れば各駅停車だが50分発よりも早く着くのに・・乗るという意識がなかった、
あまり計画に囚われるのはよくない、大きな視点で判断したいものだと感じた。
能登川駅のコインロッカーに荷物を入れて出発だ。
降り口はどちらでもよいが東口から降りた。
能登川駅から繖峰三神社の鳥居まで20分ぐらいだろうか。
多くの時間、線路沿いを歩くことになる。
時折、東海道線が通過していく。
カラーリングが地味すぎて、もう少しどうにかならないのかと、勝手な感想を抱く。
この踏切を渡れば後は道沿いに歩く、
この先には最後の自動販売機があるので、ここで水分を買っておこう。
ここに来るまで駅前とここしかなかった。
踏切りを渡るとT字路になっており、ここで交通整理のおじさんがすでに立っていた。
まずは望湖神社が見えてくる、今思えばこの時に参拝すべきであった。
少し歩くと提灯が見え、繖峰三神社の鳥居が見えてきた。
石垣にように作られている、中々おもしろい造りだ。
麓には親切にタイムスケジュールと簡易マップがある。
①宮出し:ここが頂上だ、ここから神輿が出立する。
②僧衣の岩
③吹上岩
④屏風岩
⑤本堂抜け
⑥瓜溝
⑦台懸岩
⑧二本松
⑨長番場
⑩鳥居前
⑪坂下
このように難所が示されている。
また『谷方』『山方』も一応覚えておこう、この単語がよく出てくるのだ。
鳥居の向こうはもう坂!!!!
『おいおい・・・。』
時刻は10時25分だ。
麓には地元の人だろうか4人が話していた。
まだ早いらしいな・・・。
『さて、登っていこうか!』
しかし想像以上だ、これなら登山用のグローブを持ってきたのに・・・と少し後悔。
『長番場』に到着。
『二本松』に到着、ここが坂下し祭りの最大の見せ場だろう。
すでに7人ほどの人が陣取っていた。
まだ時間は10時45分ほどだ、ここの通過目安は15時30分・・・・。
ここは二本松を登った所だ、
一瞬陣取ったほうがよいのかな・・・と思ったが、それではおもしろくない。
神輿と一緒に降りてくるのがいいだろうと判断した。
かなり高いところまで来た、見晴らしがとってもいい!!
『いい景色だな~。』
ここも難所『瓜溝』だ、あれ1つ抜かしてしまった・・・・。
そして『本堂抜け』に到着。
暑いし結構息がきれる・・・・。
もう下界の車は米粒になっている、かなりの高度まで来たぞ。
こんな道・・・(道とは言えないな。)を登っていく。
常に自問自答をする、ここで止まるべきか・・引き返すか・・・・と。
ここで次回の対策として、
①リュックで来るべき。
②手袋は付けたほうがいい。(軍手も可だがカメラが使いずらいので工夫が必要かも)
登る時、手を使って3点を使うほうが良い場所がある、
下りは、木やロープを掴むこともある。
※しかし枝は持ってはダメ、腐っていることもあり折れる、それで転倒した人も
いた。
③グリップのきく靴が良い、登山シューズでなくてもよいのでハイキングシューズなど
すべらない靴がいい。
④飲み物は持っておこう。
かなり暑いので水分は必要だ。
悩んで登っているうちに頂上(宮出し)に到達した。
時刻は11時だ、約25分ほどで登ってきた。
左には稲荷大神が鎮座している。
そして正面には神輿3台が置かれていた。
まずは参拝する、
『怪我しませんように。』
現在人の気配は2名しかいない・・・。
御神輿は3基あり、「二ノ宮」「三ノ宮」「八王子」と名が付けられている。
御神輿の重量は400〜500キロ程であり、それを下ろすのは並大抵のことではないだろう。まさに男の祭りだ。
稲荷大神には油揚げとかまぼこがお供えされている、
その前に置かれていたみかんとお餅は「これあげるよ・・・。」と神社の方に頂いた。
11時38分頃、最初の神輿衆が走って登ってきた。
続々と上がってくる。
続々と・・・。
氏子、消防隊、警官、関係者・・・一気に上ってきた。
「神降ろし」は撮影はあかんと祭り関係者より言われる。
宮司が本殿からかかるように神輿1体・1体に対して神を降ろしていく。
餅が撒かれている。
そして、出立!!!
12時25分頃、最初の神輿が動いた!!
砂埃を上げて引きずられるように目の前を通過していく。
1台目を追いかけていく、
それにより、2台目と1台目を撮ることができる。
後ろでは2台目が降り来る、最初はまだまだ慣れていない感じ、試運転状態か?!
崖という難所を越えるため、普通の神輿とは若干、というかかなり異なる。
神輿本体は縄で固定されており、皆が同じ方向を向いておらず、前方から後方に指示をだす、また後方にはヒモを持った若い衆が付く。
チームとして一体化しなければ、成功にはたどり着けない。
男衆が掛け声をしているが、
「よいとこせーのそれ」と言っている。
後方で綱を持つ若い衆は「サル」と呼ばれている。
時として座って待機する。
御神輿の先頭にいる紋付袴の男性が手にしているのは「ケンサキ」と呼ばれるもの。
御輿が谷に落ちたり、大雨などによりどうしても坂下しができなくなった場合には、
これに分霊を遷し、里まで下すためという。
難所を超えると拍手が起こり一体感が生まれる。
縄で張り巡らすことにより、四方から抑えることができる。
下りはサルの出番となる、ここが生命線だ。
2番目の神輿も吹上岩に差し掛かる。
こちらは屏風岩だろうか・・・。
神輿が岩に乗り半分が宙に浮いている、神輿の全面に子供2人を乗せ、落ちないように固定する。
てこの原理か・・・重さをかけて神輿を落とす。
縄を持ち上げ、木に通して力をかけていく、これから急な斜面を下ろす為だ。
ここは『本堂抜け』だろうか・・・よくわからなくなったきた。
急な斜面の為、人の引っ張りでは不可能と判断、木の力を利用するのだ。
2番目の神輿(八王子)が本堂抜けに差し掛かっていた。
ここから滑り落ちるのだ。
1番神輿は下りる先を間違えたのか、一旦引き上げ右へ方向転換しようとしている。
サルの最大の見せ場だ。
遠くの景色を見ると、まだまだ高いことがわかる。
そして無事に神輿は下へ消えていった・・・・。
最大の難所『二本松』に1番神輿が到達していた。
周りには人だかり、隙間からしか見ることができない。
2人の子供が神輿先頭に乗る。
仲間を信じるしかない。
歌を歌い心を一つにすると同時に気合を入れる!
『二本松』滑降開始!!
下へ滑っていった。
次に2番目神輿が二本松に到着した。
2番神輿も無事に通過していく。
すぐに次の難所が待ち構えている。
サルがとても重要な役割を果たす。
時刻は16時、最後の鳥居が見えてきた。
ラストスパート!!
2番神輿も大鳥居まで下りてきた。
時刻は16時08分だ。
下りてきた神輿は石垣の前に置かれ、装飾を取り付け元の形に戻っていく。
最後の渡御が待っているのだ。
そして3番神輿は相当遅れている、これから30分~40分はかかるとのこと。
ここで待機となる。
17時20分頃、辺りがざわめき始めた。
とうとう3番神輿が下りて来る。
最後の神輿も石垣に納まった。
帰路につく人達・・・。
しかし祭りはまだ終わっていないのだ。
これから大濱神社に向かう、徒歩20分ほどだろうか。
17時45分、大濱神社に到着。
ここで祭りが締めくくられるのだ、坂を下ろしただけではこの祭りは終わらない。
繖峰三神社⇒大濵神社へ。
日が落ちかけている、予定からは1時間ほどの遅れている。
拝殿の隣りにある仁王堂、茅葺き屋根が景観と合う。
手前のこれはなんだろうと疑問に思う。
御輿が来るまで時間があるので、
『超プチプラン・伊庭の水郷を歩こう!』を開始する。
神社前には散策マップがあるので要チェック!
伊庭は水郷の町としても知られている。
正直な話し、知らない人のほうが多いだろう。
だからこそ、祭りとセットで来て欲しい場所だ。
こういう水草はいかにも水郷らしい。
あまり神社から離れないように気をつけながら散策する。
舟が川に浮かび、そして椅子・机が置かれている、伊庭の水郷の代表的風景だ。
川と近しい町は憧れる、萩の町では家に川を引き入れていた。
海では伊根の舟屋もいい!
こちらでは水車が回り、鯉が泳いでいる、
鯉も生き生きしているようにも見える。
勝手口から水場に降りることができる。
この雰囲気、たまらない!
そろそろ、来るかな・・・と神社に向かう、
近所の子供たちも神社に向かって歩いていく。
『もうそろそろだ。』
近所の方々が10~20名ほど沿道で待っている。
坂下ろし祭りとは少し様相が変わってきている・・・。
大餐献供:18時10分
宵宮祭 :18時30分という予定だ。
18時20分、ようやく見えてきた。
お歴々に続き、楽人、巫女と続く・・・。
神子が続々と御旅所に到着。
神輿が最後に到着する。
全てが境内に入っていった。
神子が特等席に座る。
神輿は仁王堂に入っていく。
そして全ての神輿が納められていく。
そして何かが始まろうとしている、これはなんだ?!
仁王堂には今にも飛び出しそうな若い衆が睨んでいる。
提灯にも明かりが灯り、戦闘開始。
正直なところ、何をやっているか、どうなれば勝ちなのか、よくわからない。
外の塊は膠着状態となり、最後までこのままであった。
一方仁王堂内では押し込まれている、そして勝負が決する。
時刻は19時05分だ。
私はここで限界だ、時刻は19時10分。
ホテルに戻ろう!
カエルの鳴き声がうるさいぐらい響いている。
東海道線が通過していく・・・・。
駅までもう少しだ。
夕食の調達をしよう!
テレビを見ていると『伊庭の坂下し祭』が紹介されていた。
滋賀ローカルだ、
やはり全国版では流れていなかった。
かなり熱くなれた祭りだった、そして疲れた、だからこそテレビを見ても感慨深いものがある。
ビールを飲んだらすぐ眠れそうだ・・・。
滋賀の旅②・伊庭の坂下り祭り編 完