夏季休暇があと4日で終わろうとしている、
「そうだ、伊豆の踊子の旅に出よう!」と閃いた。
旅の始まりなんて、そんなものだ。
「伊豆の踊子」とは特急の名前ではない、実際そうなのだが、そうではない。
その伊豆路を走る特急の名称がなぜ、踊り子号というのか?
それはある小説の存在があるからだ、もう説明するまでもないと思うが、
私の机の上には新潮文庫『伊豆の踊子』(¥360)が常に置かれている。
これを開くたびに、旅情に駆られてしまう。
伊豆の踊子は短編小説のため、短時間で読み終え、伊豆の旅を心で感じることができ
る、とてもお手軽な旅情小説でもある。
主人公は学生の『私』、これは川端康成本人であり、修善寺、湯ヶ島から天城峠を越え
て湯ケ野へ、そして下田へと至る旅路、
その途中、旅芸人の一団と出会い、旅をともにする中、踊子に心惹かれていく物語だ。
伊豆踊子の旅程は、簡単に書くとこのようなものだ。
■東京(旧制第一高校寄宿舎)
↓
■修善寺(宿泊・一泊)
↓
■湯ヶ島(湯本館 宿泊・二泊)
↓
■湯ケ野(福田屋 宿泊・一泊)
↓
■下田(甲州屋/山田旅館)
簡単に書くとこんな旅程だろうか。
では行こう!
伊豆の踊子の旅へ
おい!
これは伊豆の踊子の旅だろ!!
ここは特急踊り子号で行くのがセオリーじゃないのか?!
とツッコむ人がいたなら、あなたは正常です!
私もそう感じてながらも新幹線に乗り込んでいるのだ・・・。
TIME IS MONEY
新幹線であれば、
一気に三島駅に行くことができる、今はそれを選択するのだ。
新横浜→三島間の所要時間
【1】新幹線利用35分
【2】踊り子号利用:約1時間15分
圧倒的じやないか!!
そもそも、早い時間帯に三島に行く踊り子号が無かったのが大きな理由だ。
車窓から富士山がうっすらと見ることができた、夏の富士山は視認しずらい。
三島由紀夫を想起してしまうが、新潮文庫・伊豆の踊子の巻末では、三島由紀夫の解説
が書かれている、これがとても難しい表現であり、よくわからない、一つだけわかるこ
とがある、
それは川端康成、小説 伊豆の踊子をベタ褒めしているということだ。
三島を出てしばらくすると、のどかな景色へと変わっていく。
伊豆急行線の海岸線もいいけど、駿豆線の田園地帯と山並みも捨てがたい。
この二つの相反するルートを持つ伊豆は懐が深いなと感じてしまう。
景色に喜びを感じていると、いつしか終着駅・修善寺に到着した。
時刻は9時6分、なかなか早い時間だ、特急踊り子を利用した場合では、こうはいかな
い。
新横浜⇒(東海道新幹線)⇒三島⇒(伊豆箱根 駿豆線)⇒修善寺
修善寺駅はかなり綺麗で立派な駅だ、改札の隣りにはお弁当屋があるのだが、
一度も入ったことはない。
「武士のわさびいなり」は少しだけ気になる・・・。
主人公の「私」は、高等学校の学生、年齢は二十歳、高校ではなく東京大学の学生。
身なりは高等学校の制帽を被り、紺飛白の着物に袴をはき、学生カバンを肩にかけてい
た、どこからみても学生といういで立ちだ。
エリートの中のエリートであり峠の婆さんや踊子一行も一目置く存在であった。
ここでも東海バスが活躍中だ、
バスによる湯ヶ島・湯ケ野・河津へのアクセスも考えたが、それでは効率的には周れな
い為、今回は断念した。
バスはおおよそ1時間の1本ほどの運行ペースだ、悪くはないのだが今回の旅程では無
理が生じると判断した。
しかし今回は修善寺に寄ることは無い、修善寺は行き尽くしたし、そもそも小説の主
たる舞台ではないからだ。
現在地の修善寺から南に下っていくと、湯ヶ島という場所がある、
ここは伊豆の踊子とは切っては切れぬ場所、特に湯本館という旅館は伊豆の踊子フ
ァンであれば一度は泊まりたいと思う場所だろう。
しかしながら今回は寄らない。
日帰り温泉もやっているようなのだが、ホームページ上では書かれていない、
繁忙期などはやっていないこともあるらしい、
ここに行くときは宿泊する時と心に決めた。
今回のルートは、
道の駅天城越えに寄り、隣接している伊豆近代博物館で文学散歩、
天城峠を歩き旧天城トンネルを見て、さらに南下していく。
天城峠を南下して、河津七滝ループ橋を下り、河津七滝の1つ・初景滝で癒され、
最終目的地・湯ケ野に向かうという行程だ。
ダンシングガール??!
全く風情のかけらもない・・・。
「私」は踊子「薫」は17歳ぐらいに見えたといっている。
小説の中では踊子をこのように表現していた、
「古風な形に髪を結っており、顔は小さく卵型で凛々しく、稗史的な娘の絵姿のような
感じだった」と描かれていた。
最後の表現はよくわからないが、大人びており、とても美しい身なりをしているという
ことだ。
後、福田家に泊まった際、14歳であることがわかった。
(伊豆の踊子より一部抜粋)
トヨタレンタカーで相棒を得た、今回はコイツと中伊豆を旅していく。
ちなみに線路反対側には日産レンタカーがある。
ナビを設定しているとラブライブサンシャイン仕様のラッピング車両が入ってきた。
いつも思うがこのインパクトはデカい。
修善寺駅⇒浄蓮の滝・第二駐車場
浄連の滝、無料駐車場P2に停めた。
正面のP1駐車場は満車、さすがにサマーヴァケーションだ、多くの人が来ていた。
しっかりと距離をとって散策していこう!
バスで来るなら修善寺駅から東海バスを使い、浄蓮の滝バス停で下車、
乗車時間は約35分ぐらいだ。
やっぱり混んでいる、とはいえ密集するような混雑ではない。
学生である「私」はどこに向けて指をさしているのか?
あっちが大島だよ、踊子ちゃん。
と言っていないとは否定はできない・・・。
実際に「私」と踊子が会話をするのは天城山隧道手前の峠の茶屋となっている、
浄蓮の滝では会話などはしておらず、「私」が遠目で踊子を見ていただけだ。
そういえば、「私」は踊子のことをなんと呼んでいたんだっけ??
ちなみに踊子は「薫」という名前だ。
踊子とは五目並べをしたり、本を読み聞かせたりするようになる。
上からも滝のビュースポットがあり、どうにか見ることはできる。
かなり階段を下っていくことになるので、足に不安がある人はここの眺望で我慢しよ
う。
それに小説伊豆の踊子では浄蓮の滝は出てこないので今回は行く必要はない!
無いのだが・・・ここまで来てマイナスイオンを浴びないのも勿体ない。
浄蓮の滝 女郎蜘蛛の伝説
ほとんどの人がスルー、子供が1人だけ熱心に見ていたのが印象的だった(笑)
彼はそこから何を感じたのか?!
普通にいけば5分ほどで滝前には到着できる。
目の前にある小屋では鱒釣りの受付をしていた、意外にもこれ目当てに来ている人が
多いように感じた。
わさび田が見える、
当然ながら、わさび関連の食べ物が目白押し、
わさびアイス、わさびソフトクリーム、わさびだんご、お土産にはもちろん生わさび
だ。
水量がすごいぞ!
よいマイナスイオンを摂取できそうだ、
そもそもマイナスイオンのことをどれほどの人が知っているのだろうか?
私もよくわからない(笑)
「天城越え」歌碑
石川さゆりの代表曲、そのなかで浄蓮の滝が出てくる、誰もが一度ぐらいは聞いたこと
があるかもしれない曲だ。
この踊子はない!!
ついでに隣りの絵の踊子もない!!(右に比べれば、少しあり!)
全く可愛くない!
では次の目的地に行こう!
浄蓮の滝→道の駅天城越え(昭和の森会館・伊豆近代文学博物館)
「道の駅・天城越え」に到着。
時刻は10時27分、まだまだ時刻は早いが、この先の道程はまだ長い。
ここに来た目的は1つだ、
もちろん、伊豆の踊子に関わるモノがあるからだ。
観光客は多いが駐車場はそれなりに空いている、
正直なところ、あまり長い時間滞在するような場所ではないで回転が速いのではない
かと勝手に考えている。
ここでも多くがわさび推しだ、
先程の浄蓮の滝観光センターから近い距離にあり、ここを通過してしまう人も多いので
は・・・と思っている。
私も土産や売店が目的なら、ここをスルーする可能性が高い。
昭和の森会館 伊豆近代文学博物館 ( 伊豆市湯ケ島892-6 )
では入ってみよう!
受付で300円ほど支払う、最初はパネルなどによる中伊豆の紹介だ。
ハイキングコースはこれだけある。
それにしても、この建物内には誰もいない・・・。
館内はとても快適だ、空調はよく効いているのでクールダウンしながら見学する。
妙にリアルな川のサカナたち・・・。
(狩野川に棲んでいる魚たちだ)
このエリアは流し見で問題なし!!
ここからが本命だ。
映画「伊豆の踊子」歴代主演女優
もう6作も作られているのだ、これで伊豆の踊子の人気の高さもわかるだろう。
私は山口百恵だな・・・。
(東宝映画 昭和49年作品)
この旅に出る前には山口百恵主演の伊豆の踊子をアマゾンプライムで視聴した。
下準備はしないとね。
外は炎天下だ、
でも窓を隔てて、こちら側は空調が効いており別世界、とても快適だ。
天城の歴史など・・・通路にパネルが掛けられている。
けっこうおもしろい内容だ。
「文学碑案内」
これは素晴らしいパネルだ、伊豆と文学の繋がりを感じることができる。
湯ヶ島から始まり、湯ケ野で終わる長大なルートだ、とはいえ歩けない距離ではない。
とんでもない距離だけどね。
天城山隧道(旧天城トンネル)
次に向かう先だ、この場所は「伊豆の踊子」を語る上で避けて通れない場所、
この伊豆の踊子の旅では絶対に外せない。
天城トンネルを抜けると、次に登場するのは河津七滝(かわづななだる)だ。
初見では絶対に読めない「ななだる」だ。
釜滝・エビ滝・蛇滝・初景滝・カニ滝・出合滝・大滝で七つの滝だ。
そして、河津七滝ループ橋を下っていくと、最終目的地まではもう少しだ、
それは湯ケ野だ、
なんだか湯ヶ島と湯ケ野、少しだけ紛らわしいが 区別がつくようにしておこう!
そこには本日の宿泊先・福田家旅館がある。
ここの伊豆のガイドブックの充実ぶり!!
東西南北、全てもらってきた。
「これより先は有料です」
え?! そういうことなの???
今までは無料だったということね・・・。
伊豆の文学25
色々な小説が地域で分けられている、
とてもお勉強になった。
多くは紹介できないが、伊豆の踊子以外にも多くの伊豆に関わる文学作品・作家の資料
が展示されている、ここはいい!
歴代映画の踊子と学生
私は山口百恵と三浦友和の伊豆の踊子しか知らない、他の映画・伊豆の踊子を見れば、
また違う感想を抱くことができるのだろうか・・・それが問題だ。
展示で最初にくるのは、もちろん「伊豆の踊子」だ。
この博物館の目玉は「川端康成 直筆冒頭文」だ、実際には現地で見て欲しい。
渓谷の「渓」が修正されているが、私もいきなり書くことはできない漢字だ。
ここは私としては、超おススメなのだが、誰も入っていないことにギャップを感じる、
私が思っているより、「伊豆の踊子」は人気がないのでは?
いや、この存在を知らないだけだろう。
外に出ると温度のギャップで目がくらむ(笑)
ここはまだ、有料区域と思われる。
伊豆の踊子の自筆文を見たので、「もう用はない!!」と思ったが折角お金を払って
入場したので「行かねば・・。」と浅ましい欲に支配されてしまった・・・。
川の流れも高さを作れば滝となる、
ただそれだけなのに、ありがたさ(高級感)を感じることができる。
「井上靖旧邸」
こちらは移築されたもの、状態はとてもよく、正直言って住みたいレベル!
井上家は名医の家系らしいので、だから自宅も立派なのだろうか。
渡り廊下がとてもいい!
こういう家に住みたい、というか田舎の家を思い出す。
湯ヶ島で生活していた頃の自伝小説だ、
湯ヶ島もとてもいい場所であり、しろばんばをめぐる旅もいいかもしれないとこの旅を
通じて感じるようになった。
雲が少しだけ多くなってきた、でも天気はいいので大丈夫だろう。
それにしても、良い庭園だ。
小高い丘に優雅に座っているブロンズ像に目がいく。
観光地にある、こういうのって、なんかいいよね(笑)
だいたい官能的なものだ。
まだ時刻は11時、
これから旧天城トンネル、河津七滝に行き、福田家に泊まる。
次回に続く!