埼玉県川越市の飛び地、荒川の堤外地には、かつて握津集落があったという、その土地柄、台風や大雨などにより度重なる水害に見舞われていた、ある大水害をきっかけとして、すべての住民は移転することとなった。
今では集落跡は殆ど無いらしいが、その名残は少しばかりあるという、その堤外地の廃集落という言葉に惹かれてしまい、ここまで来てしまった。
ここは指扇駅、JR埼京線の駅である、埼玉郊外らしい駅舎だな〜と身勝手な感想を抱いていた、では出発だ!
駅から1分ほど歩いたところに自転車置き場がある、ここの一角にハローサイクルというレンタサイクルのスペースがある、隣りに見えるのは駅のホームだ。
このレンタルサイクルには、何度もお世話になっており、もう手慣れたものになった。スマートフォンのアプリから申し込み、自転車を選択、暗証番号を打ち込み解錠するのだ。
では、出発!
スマートフォンの地図アプリを見ながら、目的地へと向かう、電動自転車は軽やかにさいたま市を疾走する。
10分ぐらい走っていくと、土手らしい場所が見えてきた、その上にはサイクリングロードが整備されており、何人かのローディーが走っていった。
土手に停まり、これから向かう方向を見た。
この先に何があるのか!!
土手を下って林の中へと自転車を走らせた。
少し不安な気持ちもあり、一旦自転車を停めて、サイクリングロードを見上げた。
ここまで来たのだ、行こう!
道はしっかりとあるけど、雰囲気はよくない、左には沼地があり、いっそう陰鬱な気持ちになった。
ある意味、しっかりとした舗装道路、そして自転車は軽快に進んでいった。
境ははっきりとはわからないけど、ここももう川越市となっている、なんでここが川越なのだろうかと少し不思議に思える。
走っていると、右に川のような、沼地のようなものが道に沿って出現した、遠くからバイクのような音が聞こえてきたけど、なんだろうか。
馬頭観音との出会い
走っていると、右へ曲がれる道があり、その入口に馬頭観音を見つけた、ここは握津集落(あくつ)の入口ということらしい。
何か刻んてあったのだろうが、私には読むことができなかった。
かつての集落の入口、今ではその住民は移転をしているが、馬頭観音はずっとここにいるのだ。
「止マレ」とかかれているが、これはいつのものだろう、先へ行ってみよう!
途中で自転車を降りて、自分の足で向かうことにした。
情報では、こちらが握津公民館らしい、これ以上先に行くことを私の心が拒んだ、この裏手には廃神社もあるらしいけど、あまりリスクを冒したくない、ここでUターンすることにした。ここまで誰一人とも会ってはいない。
それ以外に「何か」があることを期待して、脇道などに入ってみたけど、新しい発見はなかった、これは藪がボーボーと生い茂るなか、自転車で突っ込んできた(笑)
ここで限界だった・・・。
自転車を降りて、その先に広がる景色を眺める、何もない荒涼な地が広がっているだけだった、厚い雲により閉じられた世界、そのように感じられた。
左側にある道へ自転車を走らせると、その木々の向こうには数人の人とその話し声が聞こえた、私は慎重に自転車のペダルを漕ぐことにした。
そっと脇から見てみると、田畑が広がっており、農作業をしていることがわかった、移転した人たちがここで農業をしているのだろうか、だぶんそうだろうな・・・と自己完結した。
けっこう自転車で周ってみたけど、集落の名残らしきものはなかった、それとも自転車では発見が難しいものなのだろうか。
道を突き抜けると、景色は一気に開けて、ゴルフ場が広がっていた、このゴルフ場の先には荒川があり、隣りには入間川が流れる。
多くの人がゴルフに興じていた、堤防の内側に広大なゴルフ場が広がっている、不思議だな・・・とそんなことを感じながら自転車を走らせていた。
これ以上、この辺りを周っていても、新たな発見はなさそう、指扇駅に戻ろうと思った、帰ってからMAPなどを見て気づいたけど、周りのは庚申塔など、気になるモノがいつくかあった、やはり下調べは大事であり、行き当たりばったりは時として楽しいけど、物足りなさを感じてしまうこともある。
少し迷いながらも、土手が見えてきた、少しほっとしたような気持ちになった、人から見れば物見遊山と思われてしまう、そんな後ろめたさがあったかどうか・・・はわからない。
土手上のサイクリングロードにきた、ロードバイクたちが通過していく中、ママチャリで佇む私・・・少し異質のような気もするな~と自笑した。
自転車を返却して、指扇駅へ、駅前は賑わっておらず、人はまばらだった。
ホームには人はいるけど、こちらもまばら、妙に落ち着く駅だ。
空は相変わらず、どんよりとしており、終始晴れることはなかった、堤外地・握津集落を走る時、晴天であってほしいと思っていた、なぜそう思ったのかは、自分でもよくわからなかった。
少し消化不良な気もしたけど、無事終えたことに安堵した。
荒川堤外地・握津集落を走ろう! 完